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「留学生30万人計画」成功の鍵は何か

2010年06月20日 18:08



「留学生30万人計画」成功の鍵は何か

世界は留学生の争奪戦とも言える大変な時代に突入している。これは、ヨーロッパ諸国において、EU統合に向けて人材を域内全体で育てようというところから始まった大きなうねりであるが、日本は長らくこの動きを傍観し、乗り遅れてしまった観がある。日本が再び勢いをとり戻すには、何よりも大胆なトップダウンによる改革が求められている。

明治大学 国際日本学部教授
特定非営利活動法人 国際教育交流協議会 副会長
横田雅弘
世界は留学生争奪戦時代に

いまから25年ほど前、ちょうど「留学生10万人計画」が打ち出された頃、アジアの諸国では、経済が勃興してきて、さらなる発展のために人材育成に目を向けていた。そのときに、同じアジアの中で突出して発展していた日本には、留学生をひきつける十分なプル要因があり、入国管理政策による増減はあったものの、2003年には目標の10万人を突破した。

そのときのコンセプトも、アジアの中で経済発展を達成した国の責任として、同じアジアの人材教育を支援するというのが基本的なスタンスであった。
現在、日本の国内経済は伸び悩み、少子化によって市場も飽和状態である。そのような状況下、大学の数は700を超え、大学間のサバイバル時代に突入している。にもかかわらず、留学生を受け入れる戦略的な仕組みを導入しようという動きは鈍い。

私学では、助成を受けるために、あるいは定員を充足するために受け入れなければならないというところもあり、旧国立大学は、独立行政法人化以前の日和見的な体質から抜け切れていない。

しかし、これからは大学が主体的に自らの経営戦略、教育方針に則って、留学生を積極的に受け入れるという認識がなければ生き残っていけない時代になる。なぜなら、国際的に魅力のない大学は、留学生が来ないというだけではなく、自国の学生からの評価も低下してしまうからだ。
「30万人」という数字の意味

日本の大学の多くは、いまだに旧来の留学生受け入れパラダイムから抜け切れていない。その意味で、「留学生30万人計画」は、非常に象徴的であり、また目標数値として絶妙である。と言うのは、日本の大学の留学生政策がいまのコンセプトのままなら、この数値の達成はほぼ不可能だからだ。

いままでのコンセプトとは、すなわち、留学生とはマイノリティであり、特殊な存在であるという位置づけである。本来、大学全体のカリキュラムを、世界と共通性のある仕組みに変えることを目指すべきだった。たとえば、グレード・ポイント・アベレージ(GPA)という成績評価のシステムなど、世界と共通の仕組みをつくり、海外のトップ大学と単位を互換できるようにしたり、大学を国際化して、英語で行う授業を増やすなどの取り組みをもっと早くから進めてもよかったのである。

最近になってようやく、いままでの感覚で留学生を扱っていたのではいけないと気づき、各大学は国際化を打ち出しているが、すでに世界では高度人材留学生の争奪戦が始まっている。日本が国際的に競争力を発揮するためには、いまや大学の意思決定の仕組みまで含めて、あらゆることで方向転換が必要なところまできている。そういう意味で、30万人という数値は、いまのままのやり方では到底達成不可能で、否応なく大きな改革を迫るくらいの数字なのである。

我々が調査したところ、このまま推移すれば、2020年の留学生数は20万人弱がほぼ限界である。すでに、中国は留学生数50万人を目指しているし、留学生5万人政策を打ち出し、期日前にクリアした韓国も、すでに目標を10万人に切り替えている。さらに、オーストラリア、シンガポール、マレーシアも留学生の受け入れでしのぎを削っている。傍観している間に、アジア、オセアニアにおける力関係がすっかり変わってしまっていた。
トップダウンによる大胆な改革を

2020年には世界で留学生が600万人に上ると予測されており、30万人という数字はその5%に相当する。現時点での日本の留学生数は12万人、世界シェアでは5%を少し切っている水準であり、2020年においても5%を維持しようとすれば、留学生の受け入れが最も多かった1990年代後半の年率 20%増以上のペースを達成せねばならない。

この増加は、1996年頃からの、大学の自己管理を前提とした法務省の入国管理の規制緩和が背景にあった。しかし大学の自己管理は不十分で、再び厳格化されるや、受け入れはたちどころに停滞した。
30万人を受け入れる主体的な計画には、入口から出口までのストーリーづくりが欠かせない。

海外での留学生のリクルートから始まり、入国、日本語学校を経て大学に迎え、卒業して就職するまで、そして、その先の移住、移民政策まで含めた対応である。もちろんこれは、大学だけで解決できる問題ではなく、国、地域、企業との連携・協働が不可欠だ。

入口で言えば、米国の大学のように在留在籍管理ができる専門家を大学に配置したり、世界中の日本語を勉強している学生に対し、大学自らアプローチし、リクルーティングしてくることも必要だろう。
もう一つ大きいのは出口の部分。卒業しても、なかなか日本企業に就職できず、不満をくすぶらせている留学生が数多くいる。一方の企業側は、留学生に興味はあるものの、まだ慎重な姿勢を崩していない。この問題を解決するには、インターンシップを積極化することがよかろう。仕事は実際に経験してみるのが手っ取り早く、学生および企業にとっても有意義な方法である。

このように留学生に対する入口から出口までのストーリーづくりを行い、「留学生30万人」という大きな構想を実現するには、各大学がトップダウンで改革を推進するしかない。トップが大きな意思決定をし、その意思を浸透させ、万難を排して実行しない限り、グローバル時代に対応した大学改革は達成できないだろう。
横田雅弘(よこた・まさひろ)

1953年生まれ。77年、上智大学(心理学専攻)卒。84年、ハーバード大学教育学部大学院修士課程修了。2008年東京学芸大学学術博士。 1987年、一橋大学商学部専任講師に就任。同留学生センター教授を経て現職。

大学改革提言誌「Nasic Release」第18号より抜粋
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